一昔前は結婚式の引き出物で迷惑被ることが多かったと聞く。
欲しくもない物を送り付けるだけならまだいいが、二人の写真入り皿(!)を貰った日にゃもうね、ということらしい。前者は少し使って、あるいは使わないで誰かに贈呈すれば、引き出物も浮かばれて、個人的良心も傷まずにWin-Winになる。けれど、後者はもうどうしようもないよねこれ、と夫婦で顔を見合わすしかなかったという理屈らしい。カレーを入れるわけにもいかないし、お犬様専用器にするのも気が引ける。
要すれば、
ピンポーン ハーイ
「おーほほほほ久しぶりね。ちょっと近くまで来たから寄らせてもらったザマスよ」
「ほ、骨川さん! どうぞどうぞ。お入りください。遠路はるばるご足労頂きありがとうございます。まずはぶぶ漬けでも……」
「おーほほほほいいのよお構いなく。それより、私があげたお皿、あれ大事に使っているザマスか? この世に二つとない逸品ザマス。まさかカレー皿になんて使っていないでしょうね……あら? このワンちゃんが使っているのは……」
「あわわわわわわイヤイヤマサカソンナソンナ」
「……!!! キエー!!!」
という寸劇になりかねない、ということである。
もっとも、最近はそういった、いかにも世の中に不要そうなものを送ることはなく、ギフトカタログを渡すことも増えたという、というか実際私が貰っているのもそれだ。早く渡す側に回りたい、という言葉をぐっと飲み込む。ブーケと一緒にギフトカタログを投げる側に回りたい。取る方も命がけ。
まだ見ぬ配偶者を夢想しながら、涙ふきふきカタログを開く。
……しかしまあ、よくもこんなに、という商品がずらり並んでいること! 帯に短したすきに長しカタログ、とかに改名すればいいんじゃないかしら。ウクレレとか、ちょっと高級そうで高級でないボールペンとか、高品質ではないけれど、雨の日に誰かが”貸してくれたら”嬉しい折り畳み傘とか。なんとなく、所有物にすると気が引けるものが多いような……貰っておいてアレなんだけどね!
ということで、選ぶのは専ら消えモノです。意外にお勧めなのが、レトルトカレー。スーパーのやっすいやつではなく、本格派レトルトカレー。こう書くと清純派AV女優みたいで、あからさまに矛盾を来たしているようにも見えるけれど、実在します。本格派レトルトカレー。力投型サイドスローくらいのレアリティくらいに思ってほしい。
ということで、カレーにチェックして、ポストに投函! 投函するたび結婚が遠のいている気がするのは、気のせいか。やはり、パナソニック製の美容機器(中国製)にしておけばよかったか、と思う頃にはハガキがポストの底を打つ音が微かに聞こえる。
カレーが届いたら、あの気味の悪い皿に盛りつけて食べる。